結論|楽天運営の失敗は、「やることが足りない」より「違う場所を直し続ける」ことで起きる
楽天市場では、やろうと思えば施策をいくらでも増やせます。RPP広告を増やす、クーポンを出す、ポイント倍率を上げる、商品画像を変える、メルマガを送る、イベントへ参加する。
問題は、今の売上を止めている場所と関係ない施策でも、作業としては実行できてしまうことです。
楽天公式も、売上を「アクセス数 × 転換率 × 客単価」に分けて考えています。アクセスが足りない店舗と、アクセスはあるのに買われていない店舗では、先にやることが違います。
「今どの数字で売上が止まっているか」を見つけ、その原因にだけ次の施策を当てる仕事です。
落とし穴1|売上が伸びないと、まず広告を増やす
「売上を増やしたいからRPPの予算を上げる」「検索順位を上げるためにキーワードを増やす」。楽天では最もやりやすい改善です。
しかし、すでに商品ページへ人が来ているのに買われていない場合、広告を増やしても買わない人をさらに連れてくることになります。
たとえば100人来て1人しか買わない商品に、広告で200人連れてくれば売上件数は増える可能性があります。ただし、1人を買わせるために必要な広告費は高いままです。
落とし穴2|イベント、クーポン、ポイントを増やせば売れると思う
お買い物マラソン、スーパーSALE、5と0のつく日。楽天には売上を作る機会が多く、店舗側もクーポンやポイント倍率を合わせやすい環境です。
そのため数字が弱いと、「次のイベントでは10%OFF」「ポイント10倍」「クーポンを追加」と条件を強くし続ける運営になりがちです。
もちろん価格条件が原因なら有効です。しかし、商品ページで「他の商品ではなく、なぜこれを選ぶのか」が伝わっていない場合、値引きは購入理由の代わりにはなりません。
さらに、値引き・ポイント・広告を重ねれば売上が伸びても、利益が残らないことがあります。売上を作った施策と、その売上を作るために払った費用を同時に見ます。
落とし穴3|商品ページに機能とスペックを全部載せれば売れると思う
楽天の商品ページでよく起きるのが、メーカー資料にある情報を順番に入れていく作り方です。
「高性能」「大容量」「新素材」「○○モード搭載」「保証付き」。情報は正しくても、購入者が比較しているのは情報量ではありません。
検索結果から複数商品を開いた人は、「自分ならどれを選べばいいか」を決めようとしています。そこで機能一覧だけを見せると、価格、レビュー件数、ランキングへ戻って比較されます。
必要なのは、比較中の人が「自分ならこれ」と決める判断軸です。
落とし穴4|売れている競合ページを真似れば、自店も売れると思う
競合のファーストビュー、ランキング画像、レビューの見せ方、比較表を参考にすること自体は問題ありません。
ただし、競合が「価格」で勝っているのか、「レビュー数」で勝っているのか、「独自機能」で勝っているのかを分けずに形だけ真似ると、自社商品の強みではない購入理由をページに移すことになります。
たとえば競合が最安値だから成立している「価格訴求」を、価格で勝てない商品が真似ても同じ判断は起きません。先に自社商品が何で選ばれるのかを決め、その判断に必要な表現だけを参考にします。
落とし穴5|RMSの数字を見るだけで、改善したつもりになる
アクセス数、転換率、客単価、広告実績。RMSには判断材料があります。
しかし、毎月レポートを出して「CVRが先月より0.2ポイント下がった」「ROASは420%だった」と確認するだけでは、次の施策は決まりません。
必要なのは、数字を報告することではなく、「どの商品で」「どの流入で」「どこから悪くなったか」まで分け、その原因に次の作業をつなげることです。
数字を見る担当者と、ページを直す担当者と、広告を触る担当者が別でも構いません。ただし、誰が数字から『次に何を直すか』を決めるのかは必要です。
落とし穴6|売上が伸びれば、運営は成功だと思う
月商500万円が700万円になれば、一見すると成功です。しかし、その200万円を作るために広告、クーポン、ポイント、値引きを増やしていれば、利益はほとんど増えていないことがあります。
たとえば、「月商が伸びたので広告をさらに増額する」「イベント売上だけを前年比で追う」「広告ROASだけを見て商品粗利を見ない」。この運営では、売上が伸びるほど忙しくなるのに手元にお金が残らない状態を作れます。
商品別に、実売価格から原価、送料、モール費用、広告・販促費を引き、追加売上から利益が残っているかを見ます。
落とし穴7|店長が毎月「次は何をやるか」を考え続ける
楽天運営が属人的になると、月初やイベント前のたびに、店長が「今月はRPPを増やすか」「クーポンを変えるか」「ページを直すか」「新商品を追加するか」をゼロから考えることになります。
この状態では、施策数が増えるほど判断も増えます。先月やったことが効いたのかも分からないまま、次のイベントが来ます。
運営で必要なのは施策アイデアの数ではなく、数字を見れば次に直す場所が絞られる状態です。アクセス不足なら集客、アクセスがあるのにCVRが低いなら購入判断、客単価が弱いなら買い方、売上が伸びても利益が残らないなら収益構造を見る。順番を固定すると、毎月ゼロから考える必要がなくなります。
「広告・販促・ページ制作を全部やっている」のに伸びない店舗で起きていること
楽天運営の失敗は、何もしていない店舗だけに起きるわけではありません。
むしろ、広告代理店はRPPを改善し、デザイナーはバナーを更新し、店長はイベントとクーポンを回しているのに、誰も「売上を止めている場所」を決めていない状態があります。
| 自店でやっていること | それだけでは分からないこと | 先に必要な判断 |
|---|---|---|
| RPPの入札・キーワード調整 | 広告を増やすべき商品か | アクセス不足か、CVR不足か |
| クーポン・ポイント施策 | 価格条件が本当の離脱原因か | 何と比較され、どこで負けているか |
| 商品ページの画像追加 | 何を一番の購入理由にするか | 比較中の客が何を判断できずにいるか |
| 月次レポート作成 | 次にどこを直すか | 数字の変化と原因を結びつける担当 |
作業を全部埋めても、この判断が空いていれば、店舗は忙しいままです。
自社で運営するか、外部支援を入れるかは「誰が次の一手を決めるか」で判断する
受注処理、商品登録、バナー更新、クーポン設定などの日常業務を社内で回せるなら、それを外注する必要はありません。
確認したいのは、次の判断を誰が担当しているかです。
- 売上が落ちたとき、アクセス・CVR・客単価のどこから見るかを誰が決めるか。
- 広告を増やす商品と、先にページを直す商品を誰が分けるか。
- 商品ページで何を一番の購入理由にするかを誰が決めるか。
- クーポンやポイントを使う理由と、使わない理由を誰が決めるか。
- 売上増加分から利益が残っているかを誰が確認するか。
- 今月やらない施策を誰が決めるか。
この判断が社内でできているなら、運用代行は必要ありません。
逆に、作業者はいるのに店長が毎月「次は何をすればいいですか」と考え続けているなら、不足しているのは作業人数ではなく原因特定と優先順位を決める役割です。
楽天で見てきたのは、「何をやるか」の前にある判断です
私は楽天市場で、最大CVR62%(月間最高66%)、楽天総合ランキング1位、年間ランキング入賞11回、カテゴリ1位1,000回超などの運営・改善を経験してきました。
そこで繰り返し行ってきたのは、施策を先に決めることではなく、どの商品・どの数字で売上が止まっているかを確認し、次に直す場所を絞ることです。
広告、商品ページ、販促はすべて必要になることがあります。ただし、全部を同時に増やす必要はありません。原因と関係する施策だけを先に実行する方が、判断数も作業量も減らせます。
その判断を誰が担当するのかまで決めておきます。