綺麗になった。数字は動かない。
公開翌日、転換率を確認します。リニューアル前と同じ数字が並んでいる。「まだ日が浅いから」と一週間待つ。変わりません。
ヒートマップを入れると、デザインに凝ったイメージ画像の部分は高速スクロールで通過されています。読者が熟読しているのは、文字だけのQ&Aとレビュー部分でした。
「デザインが問題なのかもしれない」という解釈が再び始まります。写真をもっと良いものに差し替える。フォントを変える。配色を見直す。しかし転換率は動きません。
デザインは、情報を見やすく届ける手段です。ただ、何をどの順番で届けるかまでは決めません。
デザイナーの仕事は、情報を見やすく、伝わりやすくすることです。これはECにとって必要な仕事です。
ただ、読者がページを開いたとき、最初に何を受け取り、次に何を読み、どこで「これを選ぶ理由」を持つのか。その順番が変わらないままデザインだけを整えても、届くものは変わりません。
社内の評判と翌朝のRMSの数字
デザインリニューアルには社内の評価が伴います。「今風になった」「ブランドらしくなった」「競合より見栄えがいい」。その評価は間違いではありません。
ただ、読者がページで見ているのは、見栄えの良さだけではありません。自分がこの商品を選ぶ理由があるかどうかです。
制作の現場では、デザインと構成がセットで語られやすい。だから、この二つの違いが見えにくくなります。
デザインはページの見え方を整える仕事です。構成は、読者が買う理由を受け取る順番を作る仕事です。この二つが混ざったまま外注すると、見た目は変わっても数字が変わらない状態が起きやすくなります。
情報を箇条書きにする。スペックを表で整理する。カテゴリ別にタブで分ける。これらは情報を整理する作業です。構成は、読者が「今の自分にはこれが必要だ」と受け取るまでの順番です。整理されたページが完成しても、その順番がなければ転換率は動きにくいままです。
競合の「ダサいページ」が売れ続ける理由
競合のページを開きます。フォントが古い。写真の画質が低い。スマホで見ると文字が小さい。「これより自社のほうが見た目はいい」と感じます。
しかし競合の転換率は自社の倍以上。ここで、デザインだけでは説明できない差が見えます。
読者がページで行っているのは、「この商品を選ぶかどうか」という判断です。
その判断が進むために必要なのは、デザインの美しさだけではありません。「今の自分にはこの商品が合いそうだ」と受け取れることです。デザインはその流れを見やすく支えますが、流れそのものを作るわけではありません。
丸投げしても、同じ形になる
転換率が変わらない経験を経て、「マーケティングにも強い制作会社に一括で任せよう」という選択が生まれます。
構成とデザインをセットで請け負う会社に依頼する。しかし納品されたページは、前回とほぼ同じ流れのページになっていることがあります。
制作会社が提供する「構成」は、多くの場合、問題提起、商品紹介、特徴、レビュー、FAQ、CTAという形です。この形自体が悪いわけではありません。
ただ、ある商品の読者がどの状態でページに来て、何を受け取れば「これを選ぶ理由」を持つのか。そこが見えないまま形式だけを整えても、前回と同じ種類のページが完成します。
デザインが数字に効く条件
デザインだけが更新されている
転換率が変わらないページでは、デザインの前に「読者が何をどの順番で受け取るか」が決まっていないまま、情報の見せ方だけが更新されています。
フォントが変わり、写真が変わり、レイアウトが整理される。しかし読者が受け取るものの中身と順番は変わっていない。
この状態では、デザインを何度更新しても転換率は動きにくいままです。読者に届くものが変わっていないからです。
自社で構成を作って、デザインだけ外注する場合
コストを抑えるために、自社でExcelに構成を作り、デザインだけを制作会社に依頼する方法があります。自社で作った構成なら商品への理解は深い。デザインはプロに任せる。一見合理的です。
しかし自社が構成として作るものは、多くの場合、商品情報の整理です。スペックを並べ、特徴を箇条書きにし、FAQを追加する。
この作業は商品理解から来ています。ただ、読者がどの状態でページに来て、どの順番で何を受け取れば買う理由を持つのか、という見方とは別です。渡された情報を美しく整えたページが完成し、転換率はリニューアル前と変わらないまま残ることがあります。
デザインが転換率に貢献するとき
デザインが転換率に貢献するのは、届けるべき情報の順番が決まっていて、その順番をデザインが見やすく実現できているときです。
読者が最初に何を目にするか。どこで視線が止まるか。何を読んだ後に何が届くか。この流れが決まっているとき、デザインはその流れを強くします。
逆に、流れがない状態でのデザインは、美しい水路を作っている状態に近い。水が流れる経路がなければ、どれだけ水路を整えても目的地には届きません。
以下の状態が続いているなら、デザインを変える前に確認すべき問題が残っています。
- デザインをリニューアルしたが転換率が変わらず、次に何を変えればいいか分からない
- ヒートマップで、デザインに凝ったイメージ画像が高速スクロールされ、文字のQ&Aやレビュー部分だけが熟読されている
- 競合のデザインが明らかに粗いのに、自社より転換率が高い状態が続いている
- 制作会社に「構成も込みで」依頼したが、納品されたページがテンプレートに商品情報を当てはめたように見える
どこで止まっているかを確認します。
URLを送るだけで、2営業日以内に診断レポートをお送りします。
まとめ
ECの現場では、ページの見た目を整えることが購入率改善として語られやすい。デザインを良くすれば商品の魅力が伝わる、という考え方です。これは自然な考え方です。
ただ、デザインと構成は役割が違います。デザインは、渡された情報を視覚的に伝える手段です。構成は、読者が買う理由を受け取る順番です。
その順番がない状態でデザインだけが整えられているとき、見やすくなった情報は転換率に結びつきにくい。デザインに投資する前に、読者がどこで止まっているかを確認する必要があります。